バンプステア《アーカイブ記事》

(この記事は2010/2/16 に投稿された記事のアーカイブになります)

先日のブログで“ロールセンター”についてのお話しを書きましたが、“ローダウン”による弊害は、実はそれだけではありません。まず、皆様には“ローダウン”した状態でのサスペンションを想像して頂きたいのですが…とは言ってもなかなかイメージがつきにくいと思いますので、このように考えてみてください。

『“ローダウン”を行った場合…“ボディ”が“路面”に近づくのではなく“タイヤ”が“ボディ”に近づく』という“車体を中心”とした場合の考え方です。サスペンション理論を理解する上では、こちらの方が比較的イメージしやすいと思います。

では、あらためて“ローダウン”により“サスペンション”としてはどのような事が起きているか…これを“車両中心の考え方”から見ていくと、車体側にマウントされた部分(MINIのようなストラット方式の場合は、ストラットアッパーマウント、ロアアームのボディ側マウント)を支点として、スイングアーム側にマウントされている部分が上方へと移動してしまいます。つまり、タイヤホイールはもとより“スタビライザーリンク”“タイロッドエンド”など付随する全てのものが既定の位置よりも上方へと移動している状態ということになります。

このような状況下では純正の規定値を外れたアーム角等により、先日の“ロールセンターの狂い”のほか“スタビライザー機能の規制”や“極端なバンプステアの発生”などの症状が発生してしまいます。これらが“ローダウン”により想定される、更なる弊害ということはご理解いただけるでしょうか。

また、それぞれの弊害に対する処方についてですが“ロールセンターの狂い”は、先日ブログにも書いたとおり現在パーツ開発を進めており具体的な構造については商品リリースの際にあらためてお伝えしようと思います。また“スタビライザー機能の規制”については既に『GIOMICアジャスタブルスタビロッド』という商品名で対策部品をリリースをしておりますので是非そちらを参考にしていただき、今回は“極端なバンプステアの発生”についての説明をしようと思います。

さて、写真はR56シリーズ純正の“タイロッドエンド”です。ナックルアームと結ばれてステアリングギアボックスの収縮動作により転舵操作を行うものですが、これらも“ローダウン”によって同様に規定の位置より上方へと移動してしまいます。そして、このズレが先程書きましたいわゆる“極端なバンプステア”が発生する原因となっています。

そもそも“バンプステア”とは何なのかと申しますと、サスペンションが“バンプストローク(縮み)”する際に、ナックルアームと結ばれた“タイロッド”と“ロアアーム”の位置及び角度の関係により発生する“トー角”の変化を表します。簡単に説明するとサスペンションがストローク運動を行う際にドライバーの意思とは別に、個別にタイヤが左右に切れてしまう現象という事です。

ラジコンを作ったことのある方は想像出来ると思いますが、サスペンションというものは一般的には“上下運動”のように見えますが、アーム単体の運動で見ると車体側を支点とした“円弧運動”を行っています。皆様はとても大きな円弧運動の一部を“サスペンションストローク”としての上下運動を目にしているだけになるのです。

この理屈をもとに“バンプステア”の現象を説明しますと、支点である“ステアリングギアボックス”から伸びた“タイロッド”が、1G状態で仮に“水平”であった場合の“トー角”が“+-ゼロ”だとすると“転舵回転中心軸”(いわゆる“キングピン”)より後方で転舵操作を行うBMW MINIは“バンプストローク(縮み)”する際(“車両中心”の考え方でいうところの上方向への移動)円弧運動により“ナックルアーム”を引張っる方向へ力が働き“ゼロ”であった“トー角”が“アウト方向”へ向くという事になります。さらに、これをステアリングを切り込みロールしながらのコーナーリングの動きとして考えると、ドライバーが一生懸命ステアリングをコーナーのインに切り込んでいるのにも関わらず、車体アウト側のタイヤは“タイロッド”に“ナックルアーム”が引張られている状態となり、タイヤはコーナーの外側を向いてしまうといった現象が起きているともいえるのです。

もちろん自動車メーカーは、この現象を考慮しサスペンションの基本設計を行っておりますので、この特性を逆に生かし一定以上のストロークがあった際には“アンダー傾向”になるよう車両に“安定性”を持たせているといえる部分もあります。しかし、それはあくまで“標準車高”での話であり“ローダウン”を行った際には、やはり全く別物の問題として考える必要があると私は考えます。先程“タイロッド”が『仮に“水平”であった場合…』と書きましたが、ローダウンを行った場合の“タイロッド”の角度はまさに“水平”に近い位置まで移動してしまいます。そのような状態であれば、サスペンションの動きとしても当初に書いたとおり“極端なバンプステアの発生”を危惧しなくてはいけません。

では、その対処法は…という話ですが基本的な考え方は“ロールセンター補正”と同様でマウント位置を補正することにより解消出来ます。“ローダウン状態”であっても“純正同等”のジオメトリーを再現すれば良いということになりますが、それには“タイロッドエンド”そのものを設計するという大がかりな開発を要することが事実です。しかし、すべてのバランスが保ててこそ、基本設計の高いBMW MINIの走行性能が発揮できると考えておりますので“ロールセンター補正”に続いて“バンプステア補正”についても併せて開発をスタートいたしました。どちらも構造上簡単に作る方法はありませんが、一歩一歩の検証を繰り返しながら素晴らしい製品に仕上げたいと考えています。

*GIOMIC製アジャスタブルスタビロッド R50シリーズ及びR56シリーズ Ft用・Rr用 各40,950円(Taxin)
*参考取付時間 各約1時間

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